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菜の花の沖は!

司馬遼太郎の「菜の花の沖」は、兵庫の廻船問屋で、国後・エトロウへの航路を開いた、高田屋嘉兵衛が主人公です。作者は司馬遼太郎で、気品のある、まことに優れた作品です。

この作品は、一応歴史小説に分類されると思いますが、小説としての面白さは言うまでもありませんが、それより、むしろ、歴史の史料の面からも小説として以上に興趣深いものがあります。また、国語学的な見地から見てもなかなか得るところが多い思います。漁村の民俗という観点から見るのもよいでしょう。

当然のことですが、和船の研究を始める人にも、入門書の役割を果たすと思います。海洋の文化、瀬戸内の文化、港の文化など文化の面から見ても得るところが多いでしょう。

織布、染色やそれに関わる農業、漁業、水運、海運の循環的な把握もなかなかの文化論で、多くの方々の参考になると思います。水運や海運を支えてきた、廻船問屋や船大工についても基礎的な知識を知ることが出来ます。

特に、興味を持って読んだのは、当時の日本海の航路で、「北前船」についての記述、太平洋側の「樽廻船」「菱垣廻船」などの活躍についての記述で、江戸末期に近くなると、「沖乗り船頭」という、磁石に頼る航法が特異な船頭が現れたことです。

高田屋嘉兵衛は、とりわけ「沖乗り」に優れた船頭として、海運界に知られ、その技術を以て、北洋に雄飛したことが特異なところです。後で知ったのですが、彼の生涯を知るための研究資料は、函館のいくつかの記念館や資料館に豊富に残っているようです。

この「菜の花の沖」という作品は、単に文学作品としてではなく、その多様な文化史的な視点が、読む人のこころに様々な思いを抱かせ、それぞれの人に、様々な興味を抱かせる、そういう要素をたくさん持っている優れた作品です。

 私はこの作品を文学的な見地からと言うより、海洋の民俗誌、あるいは港の文化史という面から興味を抱き、高い評価をしています。作者にも、多面的な文化の視点を重視して、作品を構成する意図があったのではないか、と考えています。  (2008/12/20)

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